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HTCのブロックチェーンスマホ「EXODUS」とは
スタートアップイベントのSLUSH 2018においてHTCのDCOであるPhil Chen氏が登壇し、ステージ上で同社が開発するブロックチェーンスマホ「EXODUS」についてのプレゼンテーションを行いました。
プレゼンテーション後にはLitecoinの製作者であるCharlie Lee氏をステージに招き、ZIONと呼ばれるEXODUSのウォレットやリカバリー機能などについての説明がありました。
ザイオンと呼ばれるウォレット
Charlie氏は従来型のホットウォレットとコールドウォレットでは利便性と安全性がトレードオフの関係になっていると指摘。ホットウォレットに分類されるソフトウェアウォレットでは利便性は高いが高額を保管するには不安があり、例えばスマートフォンのウォレットでは盗難やハッキングの危険性がある。一方でコールドウォレットは銀行や自宅の金庫と組み合わせると非常に安全だが、その分利用し辛い。今回EXODUSに搭載されるのは、ホットウォレットとコールドウォレットではトレードオフの関係にあった利便性と安全性を両立させるようなものだと語りました。
プレゼンテーションでは「ハードウェアウォレット」と呼ばれていますが、私達がハードウェアウォレットという単語から想像するものとは少し異なります。少なくとも日本においてハードウェアウォレットとはLedgerなどに代表される、オフラインでの管理を目的としたコールドウォレットに分類されるウォレットです。しかしZIONはウォレットアプリのように利便性が高い一方で、リカバリー機能が搭載されるなど盗難への対策も施されています。
またZIONの領域はEXODUSに搭載されるAndroidとは区分けされているそうです。現状は仮想通貨などの保管について利用されるだけですが、今後はAPIも提供されるなどDappsや取引所の開発者が利用できるようになるとのこと。
social key recovery
自分自身で暗号鍵を保管し、その管理権を自身が保持することで非中央集権化を図るEXODUSですが、このスマホ自体を紛失した場合はどうなるのでしょうか?
予め5人に分散して復元用のコードを渡しておくことで、携帯をなくした場合などはその内の3人からコードを送信してもらえればウォレットの復元ができる「Social Key Recovery」と名付けられた復元機能を搭載しています。
この5人に家族や友人といった信頼できる人を選んでおくことで、管理者を排除して単一障害点をなくした状態でも信頼性を担保できます。
Charlie氏は、現在のように仮想通貨が投機の対象として扱われるが法定通貨のように利用されないのは、管理したり利用するのが難しいからだと指摘。このような状態を脱するには実際の支払いなどに利用する人が増える必要があるとしました。この点において、安全性を保った状態で利便性を向上させたEXODUSのような製品は、仮想通貨の普及に一役買うだろうと語りました。
EXODUSについてもっと詳しく
価格
このEXODUSですが、仮想通貨の利用者にターゲットを絞っています。公式サイトでは早期購入者向けのページが用意されていますが、代金の支払いは仮想通貨払いしか受け付けていません。当初はBitcoinとEthereumのみだったのですが、現在はLitecoinでの支払いも受け付けています。価格は下記の通りです。
Bitcoin | 0.15BTC |
Ethereum | 4.78ETH |
Litecoin | 19.84LTC |
EXODUSの予約が開始されたのは10月。当初は現行のハイエンドモデルと同等の価格帯だったのですが、仮想通貨の価格が全体的に下落している現在は比較的手の出しやすい価格になっている印象です。
スペック
HTC EXODUSのスペックは下記の通りです
ディスプレイ | 6インチ 縦横比は18:9 解像度はQuad HD+ (2880 x 1440 ピクセル) |
バッテリー | 3500mAh 急速充電対応 |
カメラ | メインカメラは12Mピクセルと16MPピクセルの2つ フロントカメラは8Mピクセルと8Mピクセルの2つ |
ビデオ | 4K 60fpsでのビデオ撮影が可能 3Dオーディオでの録音機能を搭載 |
オーディオ | HTC BoomSound™ Hi-Fi エディション HTC Uソニック アクティブ・ノイズキャンセル |
HTCエッジセンス2 | 片手での利用を想定したエッジセンス2 |
プラットフォーム | プラットフォーム Android 8.0 Oreo |
CPU | Qualcomm® Snapdragon™ 845 |
メモリ | RAM 6GB – DDR4x ROM 128GB – UFS2.1 |
SIMカード | Dual Nano SIM |
HTC U12+をベースにしている感じだと思います。異なる点を挙げるとすれば、EXODUSにはZIONウォレットがあるぐらいで殆ど同じですね。2018年12月時点でのU12+の価格が10万円程度なので当初は同様の価格帯での販売を想定していたのでしょうが、今は半額程度で購入できるので割安感がありますね。
実際どうなの?
公式サイトの購入ページでは発送は12月からとなっています。インターネットでは商品の発送を開始したとの記事もあるのですが、ハンズオン動画などは見当たりませんでした。今回のイベントで登壇したPhil Chen氏の手にはEXODUSがありますが、会場で示されたのは背面のみで、実機かモックか判断できません。流通目前の時期に行われる折角のイベントなので、実機のデモなどが見たかったですね。
公式サイトでも実機ハンズオンの動画などはなく、同サイト内のPhil Chen氏のビデオブログにおいて同氏が持っているのもEXODUSではありません。
HTC U12+自体は評判が良いので、そっちのハンズオンなどを見て判断してもいいのかなとは思います。しかしEXODUSの背面はすごく特徴的なのでじっくり見てみたいですね。
Phil Chen氏とは
今回のイベントだけでなく公式サイトのビデオブログ内でも「未来を守る」と書かれたTシャツを着ている方がHTCのDCO、Phil Chenさんです。DCOとはDecentralized Chief Officerの略なんですが、非中央集権化最高責任者または分散最高責任者とでも訳すのでしょうか。EXODUSのコンセプトにピッタリの役職名であることから、この商品の責任者なのでしょう。
Androidを搭載したスマホを世界で初めて発表したHTCですが、近年の業績は低迷しています。今年も大幅な人員削減を行うなど復活に向けて動く中、EXODUSがモーセの様に道を示しHTCの未来を守るのか注目したいところです。