ETH価格高騰と利用量急増により、イーサリアム上のDeFiエコシステムを中心とするスケーリングソリューションの開発が急速に進んでいます。DeFiにおいて「マネーレゴ」とも言われるコンポーザビリティは、プロトコル同士の相互作用を可能にし、フラッシュローンのような複雑な取引によって資本効率を高めます。
L2やロールアップ、チェーン間ブリッジなどのオプションが採用される中で、スピードとコスト削減を享受しつつ、ある程度のコンポーザビリティを維持することが課題となっています。
コンポ―サビリティの維持
ETH2.0はスケーリング問題を解決するための動きですが、その実現はまだ数年先です。イーサリアム共同創設者のヴィタリク・ブテリン氏は、EVM互換のZK-rollupsがイーサリアムのスケーリングの直近のソリューションであると主張しています。
Matter LabsやStarkWareなどがEVM互換のZK-rollupsに取り組んでいますが、既にDeFiプロトコルが動き出しています。分散型取引所のLoopringはZK-rollupを稼働しており、AMMとして運営しています。イーサリアムのセキュリティを持ち、30分以下の出金時間を実現します。dYdXはStarkWareが開発したZK-Rollupの無期限先物をリリースしました。どちらもスタンドアローンのプロダクトであり、他のDeFiとの相互作用は未知数です。
ユーザーにとって簡単な流動性接続
BSCやHECOなど、新たなチェーンがイーサリアムに互換性を持ち、流動性を移そうとしています。既にBinance Smart ChainやxDai上で、かなりの規模のエコシステムが発展しています。Andre氏とYearnのエコシステムは、流動性をFantomにもたらそうとしています。
一方、いくつかのDeFiプロジェクトはArbitrumとOptimism、Polygonでのローンチ計画を発表しており、EVM対応L2のローンチを競っています。LoopringやdYdXはZK-Rollupで流動性を保持しており、Curveのような主要プロジェクトもスマートコントラクト機能を搭載したZK-Rollupを年内にローンチする可能性があります。さらに、NEAR、Solana、Polkadotなどの競合するL1もかなりの流動性を持っています。
ユーザー目線では、これらすべての流動性ソースが無意識に接続可能になっている方が便利です。SushiswapやBalancerなど異なるチェーンに展開するプロダクトは、トークンアドレスとブロックエクスプローラの使い勝手を良くする必要があります。
特にウォレットは、ユーザーがさまざまなネットワークに接続するゲートウェイとして機能します。この点でMetamaskは先週、新しいカスタムネットワークAPIをリリースしました。
これは、Polygon(旧Matic)、Arbitrum、OptimismなどのL2ネットワーク、SKALEやxDAIなどのサイドチェーン、BSCなどのEVM互換チェーンを切り替えるためのシンプルなユーザーインターフェースです。Dapps開発者は、様々なチェーンをユーザーに推奨でき、ユーザーはワンタッチでネットワークを切り替えることができます。
L2 -> L1の高速出金
サイドチェーン/L2に資産を預けて引き出すことは、ユーザーや流動性プロバイダーにとって重要です。イーサリアムのセキュリティを維持するL2ネットワークは、状態遷移を検証するFraud Proof(不正証明)のために、大幅な出金遅延(24時間~7日間)が発生します。こうしたネックを解消するため、2つのソリューションが発表されています。
MakerDAOはOptimismを使ったDaiのL2 -> L1出金フローの効率化を構想しています。MakerはオラクルにL2のロールアップと出金トランザクションを検証させ、L1でfDaiを発行し、それを金庫にロックして通常のDaiと交換できるようにします。Optimismの出金期間は7日間ですが、理論的にはオフチェーンからの出金時の不正証明を数分で判断できます。
クロスチェーン流動性ソリューション
Connext Networkは、異なるチェーン上の流動性ネットワークを構築することで、流動性の細分化問題を解決することを目指しています。
Connextでは、条件付きtxを利用して、チェーンAのアセットAとチェーンBのアセットBを交換することができます。
・Connextのユーザーであるアリスは、資産Aの条件付き送金txをボブに送信。
・流動性プロバイダー(ルーター)であるボブは、同額の資産Bをアリスに送信。
・アリスは条件付き送金txのロックを解除して資産Bを受け取ると、ボブも同様のことができるようになります。
Connextのモデルはルーターの存在によりL2 <> L2転送も行うことができます。Hop.exchangeも同様の取り組みを行っています。
相互運用性がDeFiエコシステムを育てる
トークンのブリッジングをはじめ、異なるチェーン間で相互作用できるベースレイヤーのブロックチェーンとして、Cosmos、Polkadot、そしてThorchain、Compoundなどが台頭しています。BinanceSmart Chainを含め、これらのチェーンは必ずしもイーサリアムチェーンに価値をもたらすわけではないものの、出来高トップの取引所Binanceから出金できる点で足元のユーザーベースを拡大しています。DeFiの採用を拡げるためには、直接のフィアット流入経路が重要です。
SushiSwapのUniswapに対する「バンパイアアタック」により、結果的にUniswapの流動性は当初よりも増加しました。サイドチェーンの競争的な流れがDeFiエコシステム全体の規模を拡大させると専門家は述べています。HuobiのHECOはEVM対応のサイドチェーンと主張されています。当面はアジアの大手取引所のチェーンの動向が活発化しています。