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DeFi

【インタビュー】AAVEはどのようにしてレンディングプロトコル1位の座を獲得したのか?

Zenismの読者の方であればAaveを利用したことがある人も多いのではないでしょうか?

AaveはEthereumとPolygon上で展開されるオープンソースでノンカストディアルなレンディングプロトコルです。

ガバナンス権限をコミュニティに移行したり、NFTを担保にするなど新し取り組みが注目を集めています。

今回はAaveのLilith Li氏にインタビューを実施。

  • Aaveの立ち上げのきっかけ
  • Aaveの考えるDeFiの課題とソリューション
  • NFTを担保にする取り組みやDAOについて

などについて伺っています。

ぜひ最後までご覧ください。

Aaveの概要から立ち上げの経緯

ーAAVEを知らない日本のユーザーのために、簡単にプロジェクトの概要を教えてください。

Aave(名前の由来はフィンランド語で「幽霊」)とは、Ethereum上でマネーマーケットを作るためのプロトコルです。分散化、オープンソース化されていて、取引所を必要としません。

そうすることで預金側はレンディングのプールに流動性を与えることで利息が得られ、借用側はこのプールを活用して(変動金利と安定金利付きで)融資が得られるのです。

他にもAaveプロトコルの特徴は預金をトークン化し、リアルタイムで利息を発生させられる点です。この特徴はDeFiで初めて無担保貸し付けを可能にしたFlash Loansにも通じます。

現在Aaveプロトコルでは、Aave Market V1、V2、AMM、そしてpolygon Marketの4つの市場を提供しています。その詳細はAaveの公式サイト(https://aave.com/)をご覧ください。

ーなぜAaveを立ち上げるに至ったのでしょうか?

それまでのピア・ツー・ピア(P2P)では、借用側が借りられるようになるまでリクエストの承認を待たなければならず、預金側は借りたい人が現れるのを待たなければなりませんでした。現在ほど効率的ではなかったのです。

2017年にAaveは「ETHLend」と呼ばれていました。当時Aaveは、初めて預金側と借用側を自動的にマッチングさせるプラットフォームとなったのです。

レンディングプール形式に切り替えた際、私達はAaveにリブランドを行いました。預金側は預金をしたらすぐに利息を得ることができるように、借用側は担保を持っていて、かつプールに十分な流動性があればすぐに借りることができるようになったのです。2020年初頭にAave内でUniswap Marketを導入した際には、すぐに多くの預金者やユーザーを集めることができました。

2020年以降は世界中のユーザーにAaveを使ってもらえるよう、より多くのウォレットと提携することに注力しているところです。提携先の例として、MyEtherWallet、Imtoken Wallet、Trust Wallet、Mars Walletのような有名ブランドが挙げられます。これらのウォレットとAaveプロトコルはモバイルアプリ「Dapps」として統合しました。今や仮想通貨を利用している何十万人ものユーザーが利用しています。

コンプライアンスの面についてお話させていただくと、Aaveは2020年7月にイギリスの金融行動監視機構(FCA)からEMIライセンスを取得しています。これはDefiプロトコルがライセンスを取得した世界初の例です。その後、持続的にプロジェクトを運営するためにガバナンスとAavenomicsを発表しました。

「ついに待ちに待った瞬間がやってきました。Aaveプロトコルのさらに分散化されたガバナンスへ向けた、新たな挑戦が始まったのです。トークンエコノミクスをアップグレードする提案 ”The Aavenomics” を紹介できることをうれしく思います。」(AaveのCEO・Stani氏のコメントより抜粋)

https://medium.com/aave/aavenomics-eeab650cccc2

その後もAaveは2020年後半にAave Market V2をリリースし、トークンを移行。クレジットの委譲を行い、ガバナンスフォーラム開催、Aaveトークンの安全なステーキング、その他の機能を順調にリリースしました。

アジアのAaveコミュニティではこの1年間で人気の上昇が見られ、英語、中国語、韓国語、日本語などの複数の言語で100回ほどのオンラインイベントを開催。
2021年にはAMMマーケットとPolygon Aaveマーケットをリリースし、先週(取材時点)のTVL(Total Value Locked)が約24億円に達しました。

Aaveの強みと安全対策

ーAaveは現在DeFi Pulseのレンディング分野でCompoundを抑えてトップにいます。なぜここまで拡大したとお考えですか?Aaveの強みや他のプロジェクトとの違いと合わせてお答えください。

Aaveはオープンソースでノンカストディアルのため、誰でもコードにアクセスできます。また、全てが透明化されているため、自分のお金をコントロールすることも可能です。さらに、近日中にガバナンスとAavenomicsを公開する予定です。これらが、Aaveが拡大した要因の1つでしょう。加えて、AaveはEthereumエコシステムの中で最も多種多様な資産を提供しています。

Aaveは借入時に安定したレートを提供していますが、ユーザーは好きな時に変動レートを切り替えることが可能です。そのため、常に最高の金利を得ることができます。さらに、AaveのFlash Loansは手数料が預金側への報酬にもなるため、預金側にもメリットがある点はAave特有のものです。また、Aaveは複数のマーケットを持っています。現在はAaveマーケットとV2マーケット、AMMマーケット、Polygonマーケットがありますが、今後も増えていく予定です。

そしてAaveは信用委任を可能にしています。当事者Aが当事者Bに自分の与信枠を委任し、Bはそれを担保にして借りることができるのです。利用はOpenLawを介した合意によってのみ可能となります。例えばより多くの与信枠を必要としている当事者が委任者となり、借用側は企業・NGO・政府・機関などが想定されています。
詳細はこちらのツイッターをご覧ください。

他にもAaveProは、AaveとFireBlocksによって構築された許可制の分散型流動性プロトコルです。

https://twitter.com/StaniKulechov/status/1280500969986498561?s=20

KYC(本人確認手続き)を受けた機関や企業ならDeFi Yieldにアクセスできるようになります。これは従来の金融会社と繋がる実現可能な方法です。

私達はAaveプロトコルだけでなく、コミュニティや市場の発展のために長年努力してきました。Aaveエコシステムを構築するために、様々な企業とパートナーシップを結んでいます。

詳しくはこちらをご覧ください。
https://aave.com/ecosystem
https://medium.com/aave/exploring-new-frontiers-with-aave-59563ddd2405

ーDeFi市場でハッキングなどが起きる中で安全性への不安が増しています。Aaveはどのようなセキュリティ対策を行っていますか?

Aaveはガバナンス機能をリリースする前に「資産選定リスクフレームワーク」を導入しました。これはトークンがAave Protocolに登録される前にリスク分析を行い、そのトークンがAaveの高いセキュリティ基準を満たしているかどうかを確認するものです。

これには、資産ごとに異なる基準を設けています。例えば、価格が変動しやすいトークンは担保として使用できません。Aaveにトークンを上場する際に通る全てのプロセスはこちらからご確認ください。 https://docs.aave.com/risk/

ガバナンスフォーラムを公開した後は、$Aaveトークンや$StaAaveトークンなどを保有しているユーザーから、意見を聞くために投票を開催しています。Aaveプロトコルを完全に非中央集権化できるように注力しているところです。

Aaveは昨今のセキュリティ問題を深刻に捉えていることから、AaveプロトコルのV2では第三者のセキュリティ監査会社から多くのセキュリティコード監査を受けました。リンク先の図にあるように、最近ではV2のスマートコントラクトのコード監査を2021年3月に行っています。

監査してもらった会社は、CertiK,Consensys Diligence,PeckShield,SigmaPrimeなどです。詳細はこちらをご覧ください。https://docs.aave.com/developers/security-and-audits

DeFiの拡大とAaveのソリューションとは?

ーハッキング以外にDeFi全体にどのような課題があるとお考えですか?

私はTVL(預かり資産)、コミュニティの形成、マーケティングの推進がDeFiプロトコルのカギになると考えます。

TVLを一時的に増加させる方法はたくさんありますが、長期的な運用だとそう簡単にはいきません。預金者や借用者は、プロトコルからどれだけの金利が得られるかを常にチェックしているため、こういった方々はTomoChain、Polygon、SolanaなどのEthereumブロックチェーンと比べて金利が高いか低いか、GAS代が安いかどうか、取引がスピーディであるかどうかなど、「比較すること」に長けています。

預金者はより多くの報酬を得るために仮想通貨を預けます。例えば、ステーブルコインを預けることで高い報酬を獲得するのです。一方で借用側は、取引や払い戻しをより多く行えるように低い金利を必要としています。TVLを高く保つためには、あらゆる投資ファンドや資本、投資家、機関、老舗金融会社との提携や協力など、様々な方法があるでしょう。あるいはそれらの企業に特化した機能を作ることも、安定したTVLを高く保つための良い方法だと思います。

コミュニティの構築とマーケティングの促進については、TVLを高く保つことよりも簡単ですが、同時に重要です。コンテンツの作成や投稿は、アップデート、新機能のリリース、パートナーシップなどの情報を公開するための最良の方法でしょう。特に分散型金融プロトコルにおいては、コミュニティのユーザーに正しい情報を提供することができます。全ては公正な”マネーゲーム”のためです。ささいな情報でもアナウンスすることで、ユーザーをリスクから遠ざけることができます。しかし情報の通知やコンテンツの投稿は、多言語のコミュニティ間ではギャップがあるのも事実です。そのため、イベントはDeFiのユーザーを増やし、宣伝するため効率的かつ効果的な手段だと思います。DeFiユーザーはもちろん、DeFiの世界をまだ知らない新規参入者にDeFiを知ってもらい、実際に製品を使ってみたいと思ってもらえるユーザーフレンドリーな方法です。

これらのポイントを押さえておくことでTVLを高く保ち、ユーザーを増やし、より良いブランディングができ、良いサイクルを作っていくことができると考えます。

ー今後DeFi市場がより一般ユーザーに拡大していくためには何が必要でしょうか?

既に仮想通貨を利用している方にとっても、新規参入者にとっても最も重要なのは知識でしょう。仮想通貨市場にお金を預ける方法を教えるだけでなく、基本的なリスクを理解してもらうことが大事です。

DeFiとは何か、どうやって購入するのか、どうやって入出金するのか、どれくらい稼げるのか、清算データの確認方法はどうするのか、無担保ローンとは何かなど、DeFiプロトコルを使って仮想通貨で利益を得るためのガイドブックを用意するのがいいでしょう。その上で、リスクについてのシミュレーションを行ってみるといいかもしれません。

ーDeFiが今後も拡大していく中でAaveはどのような役割を果たすのでしょうか?

Aaveプロトコルは年齢、経歴、国籍などを問わず、誰もが隔たりなく貸し借りできます。そのため、どこにいても24時間365日、金融サービスにアクセスすることができるのです。将来的には、Aaveはマネーマーケットを作っていくプロトコルとなり、様々な人が様々な基準でマネーマーケットを作れるようになるでしょう。最近では新しいインターフェースを作りました。NFTの資産も担保として使用する予定で、たくさんの人がAaveを利用できるように全体のシステムを簡単に設定し直しています。

NFT担保とGrants DAOという新しい取り組みについて

ー6月にTwitterで代表の方がAaveでNFTを担保にするという内容を投稿していました。AaveはNFT市場をどのように見ていて、どのように関わる予定ですか?

NFTは仮想通貨の中で特別新しいわけではありません。既に2021年以降からはNFT+ゲーム、NFT+不動産、NFT+アートなどが盛り上がってきています。2020年11月、Aaveはシンガポールを拠点とする企業Pixelcraft Studiosへの投資を発表しました。Pixelcraft Studiosは、Aavegotchiに感化されたゲームを開発している企業です。そのゲームは、非代替性トークン(NFT)をベースにAaveプロトコルで動作し、GHSTトークンを通してAavegotech DAOで管理されています。

またAaveプロトコルでは、ユーザーがNFTの資産を担保にして借入を行えるように取り組んでいます。NFTのプロジェクトに関してはどんな意見でも常に受付中です。

「NFTを担保に。」

Stani氏は先週、Staking MondaysにてQ&Aを行いました。
ハイライトは、Stani氏がどのようにしてWeb3に投資しているか、Aaveのシステムがどのようにユーザーを保護しているか、Aaveの最終目標、Stani 氏の「AaveではEthereum上にTwitterを構築する」という発言は本気なのかどうかです。

担保としてのNFTに関する将来性についてのStani氏の見解もStaking Mondaysの動画で見ることができます。

ーAave Grants DAOという新しい取り組みも行っていますね。なぜGrantsを始めようと思ったのでしょうか?またどのようなことを期待していますか?

以前にもAave Grantsのプログラムがありましたが、これは何かしらAAVEに役立つ機能を構築してくれる人のためのものでした。今は、この新ブランドをより分散化されていて簡単なものにすると決めています。

Aave Grant DAOは新しいブランドです。@Lauracsc_から新しいブランドとして発表されました。ビジュアル・アイデンティティではAaveとのつながりを反映しており、主要な部分はコミュニティのさまざまな側面を表しています。

Aave Grant DAOAaveウィークリーレポートに関連データを公開しています。

Aaveの最新ニュースは2021年7月26日の-Aave News-をご覧ください。
July 26, 2021 – Aave News – Updates Abound: Paris, AMPL, PAX, and Liquidity Mining

最後に:日本市場へのメッセージ

ーAaveにとって日本市場とはどのような意味を持つのでしょうか?

誰もが知っているように、日本は世界でも類を見ない市場です。その文化、技術、習慣などで世界的に有名で「ナカモト サトシ」が日本人名であることはすぐに分かります。 日本のユーザーが仮想通貨に対して特別な感情を持っているのは、これが理由でしょう。Aaveプロトコルはすべての市場に開かれており、日本からもDeFiやNFTのための革新的な視点やプロジェクト、特にアートやゲームなどが出てくることを望んでいます。

ー最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

まず日本のAaveユーザーに感謝を示したいと思います。またこの新しく素晴らしいマーケットに参加する新規ユーザーに歓迎の意を表します。DeFiは従来の金融に革命をもたらすものですが、まだ反映されているとはいえません。恐らくDeFiの利点は近いうちに日本でもよく知られるようになってくるのではないでしょうか。AaveはたくさんのユーザーにAaveコミュニティに参加していただきたいと思っていますし、世界規模でのAaveの成長を一緒に見守っていただきたいと思っています!