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デリバティブ

Cherry Swap/Cherry Dai|金利スワップを提供する自動マーケットメイカー

Cherry Swapとは、DeFiレンディングプロトコルにおける変動金利を取引するオープンソースプラットフォーム。ざっくりいうと金利スワップを提供する自動マーケットメイカーです。

Compoundなどのプール型レンディングの金利は市場要因により金利が変動する変動金利であり、cherryswapはこの金利の変動リスクをヘッジするために変動金利と固定金利を交換して取引するサービスとして考案されました。

今後、CompoundなどのDeFiレンディングプロトコルを活用した固定金利の融資サービスが増加してくると、このようなDeFiレンディングプロトコルを対象とした金利スワップ市場の需要が増してくるのではないでしょうか。

2020年2月21日現在Cherryswap/CherryDaiは開発途中であり、具体的な仕様情報が不足している為、開発者の構想をもとに今回はサクッとCherryDaiについてご案内致します。ご容赦ください。

※スワップで提供される変動金利については、プール利用率(需要)に応じてアルゴリズム的に設定されます。

※「プール型レンディングサービスの変動金利の仕組み」については下の記事をご参照ください

そもそも金利スワップとは

Cherry swapのような金利スワップについての理解を深めるために簡単に伝統的な金融システムにおける金利スワップの役割について解説します。

金利スワップとは、伝統的な金融システムの中では活発に取引されているデリバティブ商品の一つで、変動金利と固定金利を交換する取引のことを指します。あまり馴染みのない方も多いかと思いますが、金利スワップが最も利用される場面は銀行業務においてです。

銀行は預金者から資金調達した資金(つまり、預金です。この場合、変動金利が資金調達コストとなる)を元手に取引企業などへ資金貸出を行い収益化しているわけですが、この際に固定金利で長期貸出するケースもあります。仮にこのような場面で金利水準が上昇してしまうと、資金調達コストである預金金利は上昇しているのに、貸出金利は固定のままですので銀行の利益が減少してしまうということが起きてしまいます。

このようなリスクを回避するため、銀行は金利スワップを活用して利益の安定化を計っているのです。金利スワップはこのようなリスクヘッジを目的とした利用、もしくは投機的な目的で利用することができます。

※預金には様々な種類がありますが、預金金利は基本的にその時々の金利水準、つまり銀行同士の資金の貸し借りをする市場での取引により決まります。また国内ですと、日銀による金融政策で金利水準をコントロールしています。

Cherry swap

Cherryswapプラットフォームでは、買い手と売り手をマッチングさせる必要性を無くすために、個別のオーダーブックをなくした流動性プール型の金利スワップマーケット構築を目指しています。ココではその仕組みについて説明していきます。

※まずCherryswapで利用される利付トークンCherryDaiとユーザーの役割について以下説明

Cherry Dai

CherryDaiとは金利スワップを提供する自動マーケットメーカーCherryswapで利用されるERC20トークン。より具体的にいうと流動性プール内にデポジットされた元本の所有権(CherryDaiと引き換えにデポジットしたDAI)+スワップ提供から生じる利益を表す利付トークンです。

ユーザー

システム内で活動するユーザーはLP(流動性プロバイダー)、またはトレーダーとして参加することができます。

LPの役割はCherryDaiシステムにDaiをデポジットして流動性を提供することです。もう一方のトレーダーはシステムに対して金利スワップ取引を行うユーザーのことです。

どのように機能するのか

1.CherryDaiをミント

まずDAIステーブルコインをCherryDaiのシステムにデポジットすると、同額のCherryDai(流動性プールの一部の所有権を表す)がミントされます。←LP(流動性提供者)になるということです。

2.資金をCompoundに貸出、金利獲得

その後すぐに、デポジットされたDaiはDeFiレンディングプロトコルCompound(将来的にはその他レンディングプロトコルからもアグリゲートする予定)に貸し出されて変動金利を獲得し始めます。

3.CherryDaiの償還

保有するCherryDaiは「デポジットしたDai+変動金利+プール利益(手数料)」として償還することが可能です。※ただしプールの利用率100%未満の場合のみ償還可能

上述しましたが、CherryDaiにはオーダーブックがなく、同一流動性プール内でスワップのロング、ショートをサポートしており、P2Pマッチング型と比較するとその為に資本効率が上がります。このような仕組みのため、原資産であるcDAIトークン(直接CompoundにDaiを貸し出す)の大きな金利変動がなければ、ただcDAIを保有しているよりも、プール利益が足されることでより高い利回りが得られる可能性(つまりリスクが高まる)があります。

また大きな金利変動があったとしても、流動性プロバイダーへの損失が減少するように、動きの前にスプレッドを大きくするようです。

流動性プール内のスワップに対する割当(特に流動性プール利用率に関する注意事項)

スワップトレーダーがショートした場合

当然ながらマーケット開設当初のプール内バランスはゼロです。LPにより提供された流動性は、スワップトレーダーが参入するとショート、ロングの特定のポジションに留保されます。

仮にトレーダーがショートすると(固定金利を受け取り、変動金利を支払う)、Cherry Swapコントラクトはロングに入る(変動金利を受け取り、固定金利を支払う)

この際にショートカウンターパーティに支払わなければならない固定費を流動性プール内で確保しておかなければなりません。このような将来価値に対する準備をする為にプールの可用率が低下し、それに伴い利用率が増加していきます。

プールの利用率が100%に達するとCherry swapコントラクトに対するスワップ提供は行えなくなり、利用率が低下するまではCherryDaiを償還することもできません※LPにより流動性が追加提供されるとスワップ可能になり、引き出し可能になります。

スワップトレーダーがロングした場合

トレーダーがロングする(変動金利を受け取り、固定金利支払い)場合、Cherryswap側はショート(固定金利を受け取り、変動金利を支払う)します。この際に流動性プールが支払う必要のある金利の上限は定義されていません。※25%の上限(パラメータは調整可能)を設けることは可能です。

金利計算の自動化について

スワップで提供される金利は、現在のCherryDaiプール利用率の関数として計算されます。仮に多くのトレーダーが一方向(ショートorロング)に集中すると、その方向への参加コストが高まり、需要減少→バランスする見込み。となります。

スワップの両サイド(ショートorロング)には独自の曲線が存在(上画像:流動性プールが提供するレート)し、各曲線には合計流動性プールの半分が入っています。流動性プールが取引時に提供するスワップごとに固定レートが設けられており、LP(流動性プロバイダー)側から見て、LPが固定金利を受け取る(高い方が好ましい)、LPが固定金利を支払う(低い方が好ましい)の2つの固定金利として、現在の変動金利周辺のスプレッドを定義しています。

  • Pl:プール利用率(ロング)
  • Ps:プール利用率(ショート)
  • r:マーケットに定義された現在の変動金利
  • rl:LPがトレーダーに支払うロングオファー
  • rs:LPがトレーダーに支払うショートオファー
  • α:プール使用率に基づいて曲線がどの程度の勾配になるかを定義するスケーリング係数

Cherry Swapインターフェース※2019.9.3時点の仕様

※2019.9.3時点の仕様ですので、ご参考までにご覧ください。

1.Commit Phase

このフェーズでは、参加者は特定のCompound市場の将来的な金利に対してショートポジション(金利減少に賭ける)、またはロングボジション(金利上昇に賭ける)のいずれかを取ることができます。

2.Lock Phase

このフェーズで対象の資産をロックアップし、その時点で金利(固定)が設定され、発生した金利は全てプールされます。※ロックアップ終了後に参加者に返還される

3.Payout Phase

ロックアップ終了後に未収利息はプール参加者間に配分されます。つまり、金利の予測が当たっていた場合は本来もらえる金利よりも多く金利収入を得られるということです。

Cherry Swap詳細