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ステーブルコイン

Metacoin v0|ガバナンスを最小限に抑えることを目的とした暗号資産担保型ステーブルコイン

Metacoinとは、暗号資産担保型ステーブルコインであるDAIステーブルコインのガバナンスシステム上のリスクを踏まえた上で、異なるリスク選好をもつ人々のためにDAIの代替手段(DAIの立場を奪うというわけではなく異なる選択肢を提供することを目的とする)として考案されたステーブルコインです。

MakerDAO(Dai)とMetacoinは、ETHを担保にステーブルコイン(DAI、COIN)を発行して、担保価値が低下した場合は発行者(DAIの場合のVault)を清算するという仕組みは同じなのですが、「プライスオラクル」「金利設定におけるガバナンスの役割」という点で大きな違いがあります。

より堅牢なDeFiエコシステム構築の為に、このようなMakerDAO代替案が出てくるというのは好ましいことではないでしょうか。まだまだ模索段階ではあり、議論されるべきところは多いとは思いますが、今回はサクッとMakerDAOのDAIとの違い(上記2点)をもとに、Metacoinがどのようなものとして考案されたのかを概観致します。

Metacoin

プライスオラクル

※ここでいうプライスオラクルとは、Metacoin、MakerDAOでETH/USDの基準価格決定に利用されるオラクルのことを指します。オラクルとは?という方は下記事をご参照ください

MakerDAOではガバナンスによってプライスオラクルが選択され、更新された価格を6時間毎にその情報を送信していますが、一方のMetacoinではガバナンスによってプライスオラクルを選択するということをせず、代わりに法定通貨担保型ステーブルコイン(USDC、USDT、TUSD)をガバナンスが選択し、Uniswap(DEX)上にある対象となるバスケットの売上高加重平均価格(VWAP|Volume Weighted Average Price)を使用してETH/USDの参照価格を決定します。

このMetacoinの複数の法定通貨担保ステーブルコインを参照するプライスオラクルというアイデアは、これらステーブルコインが独立して集権化しているため、同時に共謀して取引活動を操作しない可能性が高いという前提の元では信頼性の高いシステムと言えます。※ただし、DEX上の価格のみを参照とする為、短期的な価格操作は容易なのではないかという指摘もあり、深刻な問題となり得るリアルタイム価格データを参照してしまうと、COIN発行時に担保していた暗号資産の担保不足を引き起こす最悪のシナリオが生じる可能性もあります。

またMakerDAOがMetacoinのようなシンプルなプライスオラクルを用いないのは、v1当初にuniswapが存在しなかったこと、そして担保に不動産などのオフチェーン上のアセットを用いることを最終的な目標に含まれているからという理由があります。その意味では、MetacoinはMakerDAOの地位を脅かす存在というわけではなく、あくまでも異なるリスク選好をもつユーザー向けの代替品という扱いになるかと思います。

ガバナンスと金利レート

MakerDAOにおける金利レート、つまりDaiを発行するスマートコントラトVaultのStability Fee(1DAI=$1をターゲットに安定させる為の手数料)はガバナンスによって調整されます。例えば 1DAI < $1 の場合、Stability Feeの引き上げを行い、Daiを発行維持させるコストを高めることでDAIの償還を促し、DAIの市場流通量を減少させます。反対に1DAI > $1 の場合は、Stability feeを引き下げ、DAIの追加発行を促し市場流通量を増やしてDAI価格の引き下げを行う。これらの金利更新の為のガバナンスはおおよそ1週間に1回の頻度で行われます。

一方のMetacoinのStability feeの調整はMakerDAOのようにマニュアルで行うのではなく、アルゴリズミックPID制御によってなされます。※PID制御(proportional integral Derivative Controller)とはフィードバックを利用する制御ループメカニズムのことです。

PID制御は、COINの現在価格を取得するスマートコントラクトとして実装され、これをステーブルコインバスケットの売上高加重平均価格(←1ドルの基準点とする)と比較した差をもとにして金利を自動更新。このようにMetacoinの金利レートはガバナンスを最小化して自動化(ローンチ後は更新不可)されている為に、適切なオペレーションがなされるようにPID制御のパラメーターを慎重に選択する必要があります。※PID制御のパラメーター決定には、MakarDAOの過去数年間におよぶ金利レートをマニュアル変更していたデータが役立つとしている。

また、PID制御は、ガバナンスを最小化させる為に一度ローンチされると更新不可となり、それ故に不適切なシステムパラメータ設定や外部操作を原因としたランナウェイフィードバックループのリスクに対処する為にシステムを安全にシャットダウンさせる方法を必要とします。

その他、金利更新のためのPID制御利用にはオンチェーン価格フィードも必要とされる為に、Uniswap上のCOINの流動性を高める為のインセンティブを設ける必要もあります。※例えばCOIN発行者に10%の金利を請求し、COINの償還及びETH担保引き出しを奨励する場合、COIN保有者はCOINの購入、保有を奨励する為に10%の金利を得られる。この両方の効果が連動することでCOIN価格が1ドルへと均衡しペグが安定。

META報酬

MakerDAOでは、Vault(DAI発行者)に請求して得た手数料(DAI)をもとに、スマートコントラクトを介したパブリックオークションでMKRを購入し、その後バーンすることでMKRの価値を高めるということを行っています。

この点においてはMetacoinも同様のモデルを採用していますが、上述した例のように金利を徴収するシステムが異なる為に、COIN発行者からCOIN保有者へと提供される金利のうち10%を手数料としてMetacoinが徴収する仕組みになるようです。またパブリックオークションの代わりに、ここで得られる手数料をもとにUniswapでMETAを購入してバーンしてMETAの価値を高めるようです。

流動性インセンティブ

上述のPID制御を適切にオペレートする為に必要なCOIN/ETHの流動性インセンティブ(Uniswap上の)について。

分割手数料/Splitting fees

META保有者とCOIN/ETH流動性プロバイダー(Uniswap)間で取引手数料を50/50に分割して報酬として与える

METAインフレーション

MetacoinでもSynthetix(SNX)コミュニティがトークンインフレーション報酬でUniswapの流動性提供を奨励したモデルを参考にしていますが、ガバナンスを最小限に抑える為にMETAインフレスケジュールは開始時に固定されています(下画像参照)。

※MetacoinがUniswap addLiquidity functionをラップして、流動性プロバイダーにMetacoinを介してUniswapへ流動性提供するよう強制することで、上記2点を実装。

担保としてCOIN/ETH LP shares (COIN/ETHの流動性提供を表すトークン)を受け入れる

直接的にCOIN/ETHの流動性提供を促すものではありませんが、流動性プロバイダーが流動性を活用してより多くのCOINを発行することができる為、その意味ではCOIN/ETH流動性提供の有用性を高める仕組みと言えます。

投票権

投票で決定可能な対象は「バスケットからステーブルコインを追加/削除」、「システムのシャットダウン」のみ。投票の権利をもつ者は、COIN発行者、COIN保有者、COIN/ETH流動性プロバイダー、META保有者となります。1COINが1票という扱いになるのですが、1COIN=1米ドルとして扱うことで、その他当事者が保有するトークン(METAやliquidity sharesなど)を1COINに換算して票を獲得。

ハッピーエンド(緊急シャットダウン)

Metacoinのハッピーエンドとは、MakerDAOにおけるGlobal Settlementのことです。システムをシャットダウンさせる為のMetacoin投票で33%を超えると「ハッピーエンド」がトリガーされ、MakerDAO同様にCOINをETHと直接引き換えることができるというシステムです。

Metacoin詳細