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ブロックチェーンが削減するとされている『信用コスト』とは?

信用コストとは何か。現代社会におけるそれは具体的には何をさしており、何が問題で解消する必要があるのか。まずそのことについて少し踏み込んで考えてみたいと思います。

ブロックチェーンは信用コストを削減するというような表現をされたりしますが、具体的に信用コストとは契約書、信頼のおける会社による仲介、保険、法律などによって信用を担保するためにかかるコストのことをさします。

ブロックチェーンはこれらにかかる経費を削減する仕組みとしてスマートコントラクトや分散型台帳を用いています。

一方、現代社会では信用を担保するために、契約書、信頼のおける会社、保険、法律など複数のレイヤーを用いることで信頼を前提とした社会を維持しています。

現代社会における信用問題『Swiss-Cheese Model/スイスチーズモデル』

しかし、複数レイヤーを用いていたとしても各々のレイヤーに抜け穴があったとしたら契約内容を反故にすることも可能です。これを下図のように各レイヤーにチーズの穴のような欠陥があるのでスイスチーズモデルと呼びます。

参照元:https://en.wikipedia.org/wiki/Swiss_cheese_model

信用を担保するための各レイヤーに欠陥が出ないように、契約書作成、法律の参照などに多くの時間を割き、それでも足りない場合は保険をかける。これら全てにかかる金銭的な費用はもちろん、時間コスト、労働コスト、人によっては神経をすり減らしながら労働するので精神的コストまでもが信用を担保するために費やされています。

何故そこまでして信用コストをかけなければならないのか?

信頼のおける組織、人はいるのか?ということに関してはなかなか難解な問いになってしまうので触れませんが、少なくとも全ての人が善人であるならわざわざ信用を担保する仕組みを人類が苦心して生み出す必要などなかったはずです。ですので、第三者を全面的に信用するというのは歴史的な観点からするとナンセンスな考え方のように思えます。

現在、当たり前に支払っている信用コストは本当に必要なのかどうかということについては、仮にこの世の中に裏切りが存在しないとするならば、これら信用担保にかかるコストは生産性に直結するわけではないので不合理な行為と言えます。残念ながらそのような世界を構築することが如何に困難な試みであるかは人類の宗教史を概観すればご理解いただけるかと思います。

それ故に人類はこれら信用コストを効率化するために人ではなく法整備など環境を変えることで信用を担保することを考えついたのではないでしょうか。

これら信用を担保するための方法にはコストの問題以外にも社会構造の煩雑化という問題も抱えているのではないでしょうか。

チーズの抜け穴を誰かが見つけて通るたびに、新たな法を詰め込んでは、また新たな抜け穴を見つけて…というように負の循環が繰り返されることで複雑化が進み、それゆえにミスが生じやすい煩雑な環境に人類は身を置くことになってしまったとも言えます。

ブロックチェーンが注目されている理由の一つには、これら信用担保のための『負の行進』、『複雑化の進行』に代わるシンプルな解法を導き出したことにより、信用コスト削減の可能性が示唆している点も含まれています。