暗号通貨BitTorrent Token(BTT)の特徴|P2Pを利用した世界最大のエコシステムへ導入されるトークンとは

暗号資産(プロジェクト)

BitTorrent Token概要

  • 形式: TRON TRC-10
  • 発行総数: 990,000,000,000 BTT

BitTorrent Token(BTT)とは、TRON財団BitTorrent財団が新たに発行するTRONのTRC-10に準拠したトークンです。さしあたってこのトークンはBitTorrentの抱える問題を解決するために利用されますが、将来的にはBitTorrent上に展開されるサービスでの利用も想定されています。

BitTorrentとは

まずBitTorrentについての説明の前に、「BitTorrent」という単語が持つ多義性について説明します。「BitTorrent」という単語が文中に現れた場合、それが何を示しているのか注意しないと混乱してしまう場合があります。
BitTorrentと書かれている場合、下記のいずれかを指していると思われます。

  1. BitTorrentプロトコル
  2. BitTorrent財団
  3. BitTorrent Inc
  4. BitTorrentクライアント全般
  5. BitTorrent Incが開発するBitTorrentクライアントであるBitTorrent

しかし、上記のものを特に区別せず「BitTorrent」と書いている文章も存在し、文脈から判断し辛い場合もあるので注意が必要です。

BitTorrentプロトコル

基礎となるBitTorrentプロトコルですが、これはP2P技術を利用したファイル転送用のプロトコルです。P2PはBitcoinなど仮想通貨全般で利用されている非中央集権化の要ですが、BitTorrentプロトコルはユーザー数においてBitcoinを凌駕する世界最大の非中央集権型プロトコルです。数でいうとBitcoinのアドレス数は約3000万ですが、BitTorrentのユーザー数は約10億と約30倍の膨大な規模です。

このBitTorrentプロトコルは、従来のサーバーが必要な形式とは異なりP2Pを使って大容量ファイルの転送を容易にするもので、2001年にBram Cohenが開発を開始しました。BitTorrentプロトコルは、細分化されたファイルの転送が複数の端末間で行われるため、従来のユーザーとサーバーの1対1での転送と比べて効率よくファイル転送が行えます。ユーザーは特定のファイルをダウンロードする目的でBitTorrentクライアントを利用し、ダウンロードを行います。

BitTorrentプロトコルに関して、以降の説明で利用するため覚えておいて頂きたい用語があります。「swarm」「seed」です。

ユーザーは特定のファイルをダウンロードする目的でBitTorrentクライアントを利用するのですが、その特定のファイルが共有されているグループを「swarm」と呼びます。
このswarmでは対象ファイルのアップロードとダウンロードが行われているのですが、その対象ファイルを完全な形で保有している者をseed(またはseeder)と呼びます。ここは個人の感覚なのですが、完全な形でファイルを保有している者をseederと呼び、seederによるアップロード行為をseedと呼んでいる場面が多いのではないかと思います。

BitTorrentプロトコルにおけるファイルのやり取りは本質的には物々交換です。ファイルを一方的にダウンロードするのではなく、ダウンロードしたファイルをまた誰かにアップロードします。こうすることでswarmにファイルが存在する状態を維持し、将来的にswarmへ参加するユーザーがダウンロードできるようにします。

BitTorrent Inc

BitTorrent IncはBitTorrentプロトコルに関連したプロダクトの開発と、メンテナンスを行っています。BitTorrentのクライアントは沢山あるのですが、BitTorrentμTorrentというクライアントのシェアが大きいです。そして、その両方の開発をBitTorrent Incが行っています。
このBitTorrent IncとTRONは2018年に戦略的パートナーシップを構築しているため、今回のBTT発行やTRC-10準拠も当然という印象です。

BitTorrentの何が問題なのか

BitTorrentプロトコルでは、swarmにファイルが存在する状態を維持することが重要となります。しかし帯域の非対称性とインセンティブの不足から、ダウンロードを終えたユーザーが享受した利益分の貢献を行わないままswarmから抜けてしまうという問題があるのです。

ユーザーはswarmにおいてアップロードとダウンロードを同時に行えます。そのため、ファイルを完全な状態で保有するseederがswarmに存在しない状態であっても、swarm内に完全なファイルを復元できる状態でファイルの断片が分散されていればユーザーはダウンロードを完了することができます

ここからは図と例え話を使って進めます。
ABCDというユーザーがファイル(図中のオリジナルファイル)をやり取りするswarmを形成しているとします。

CASE1ではAが完全なファイルを持つseederであり、残りのユーザーも時間が経過すればファイルをダウンロードできそうです。


CASE2ではseederはいませんが、相互にファイルを持ち寄れば完全な形で元のファイルが復元できます


しかしCASE3の状態になると、相互にファイルの断片を持ち寄ったとしても元のファイルを復元することはできません。ここまで来ればもう手遅れで、ユーザーは元のファイルを復元するための残りの部分を持ったユーザーがswarmに戻ってくるのを期待するか、完全な状態でファイルをダウンロードすることを諦めるしかありません。

では、こういった状態に至る過程でファイルはどういった動きをしているのでしょう。これに関して帯域の非対称性という要素を加味し、CASE2から派生させる形で考えてみたいと思います。


CASE2では各ユーザーは断片的なファイルしか保持していませんが、それぞれのファイルを持ち寄ることで完全な形のファイルを復元できる状態にあります。このswarmを形成するユーザーの中で、Aは通信速度が特に早い回線を利用しています。そのためCASE4の様に他のユーザーから先にファイルの断片を集め、いち早く元ファイルの完全な形でのダウンロードに成功します。

Aはそれまで持っていた完全な形でファイルをダウンロードしたいという欲求が叶えられてしまい、当初の目的が達成されたことに満足し、BitTorrentクライアントをシャットダウンします。

そうするとCASE5の様にswarmに残ったユーザーは手元にあるファイルの断片を持ち寄ったとしても完全なファイルを復元できない状態になってしまいます。

実際にBitTorrentプロトコルを利用してファイルをやり取りしているユーザーの接続状態はそれぞれ異なります。ユーザー数が多く、運用環境も多種多様であるためユーザー間での通信速度にも差が生まれます。その結果、先にダウンロードしてしまったユーザーがインセンティブを失いswarmから抜けるという現象が発生します。このため、時間が経つごとにユーザー数は減少し、swarmにファイルがある状態を維持することが困難になります。

今までの説明で、seederが不在の状態でもswarm内にオリジナルファイルを復元できるパーツが揃ってさえいればダウンロードは可能と説明しました。しかし実際には、seederが欠けた場合に完全なファイルを再構築するのは非常に困難でseederはファイルの存続に関して大きな影響力を持っているという調査結果もあり、CASE2の状態でも既にダウンロードが困難な状況に陥っているのです。

BitTorrent Token(BTT)

BitTorrent Tokenは上のセクションで説明した問題を解決する目的で利用されます。ダウンロード終了後離脱してしまうユーザーにより短命に終わってしまうswarmを、BTTを導入しインセンティブとして利用することでより長く存続させようという考えです。このシステムの運用はBitTorrent Speedという機能をクライアントに実装して行われます。

BitTorrent Speed

BitTorrent SpeedはBitTorrentプロトコルそのものではなく、BitTorrentクライアント側に実装される機能です。既存のエコシステムを残したままBTTをインセンティブとして利用し、より効率的な計算資源の割当を目指すためプロトコルの変更が不要なこの方法が採用されました。

プロトコルの書き換えではなく機能がクライアント側に実装されることで、BitTorrent Speedは強制される様なものではなく、ユーザーが利用するかどうかを選択することができるものになります。

BTTというインセンティブやそれによってもたらされる変化を避けたいというユーザーは、数あるクライアントの中からBitTorrent Speedを実装しないものを選択したり、この機能をオフにする設定を利用し今まで通りBTTの影響を排除した形でファイル共有を行うことが可能です。

このクライアントに対して新たに実装される拡張機能ともいえるものにより、ユーザーはBTTとアップロードスピードを取引する市場に選択的に参加することが可能になります。今までダウンロードが終了するとswarmから離脱していたユーザーも、BTTというインセンティブが存在することで滞在し続けアップロードによるswarmへの貢献を行い、結果としてのswarmはより長い寿命を持ちファイルが拡散される時間も長くなります。
BTTを対価として支払い優先的な立場を得ることでダウンロードに必要な時間を短縮させることも可能になり、ダウンロードする側もメリットがあります。

このBitTorrent SpeedはまずはBitTorrentとμTorrentというBitTorrentクライアントに実装されます。

BTTがもたらす可能性

BitTorrentプロトコルはP2Pを採用したものとして世界最大のユーザー数を抱えています。このユーザーが持つ計算資源の合計はとてつもないものになります。

TRON財団とBitTorrent財団はここに目をつけ、この計算資源の効率的な割当だけではなく、これを利用し非中央集権型のアプリを立ち上げるプラットフォームを構築することも考えています。

これが行われればBitTorrentプロトコルの利用者はプラットフォームを構成する計算資源を提供する側になり、提供の対価としてBTTを得ることも可能です。最終的にはこういったdAppsプラットフォームの立ち上げが目的であり、BitTorrent Speedはそこへ至る道筋を整備するための手段と言うこともできます。

アプリ開発者は基礎となるリソースの提供者へ直接BTTで報酬を与えられる様になります。そして、開発されたdAppsのサービスの決済にBTTが利用されるようになればそこに新たなエコシステムが作り上げられます。

この新たなエコシステムで提供される可能性のあるものは下記の通りです。

  • 検閲者や攻撃者が存在しない形でのファイル転送サービス。
    帯域の優先権を入札方式で取引し、決済にはBTTが利用される。(これは既存のBitTorrentプロトコルにBitTorrent Speedの機能を付加したものです)
  • 非中央集権的なストレージサービス。
    既存のBitTorrentプロトコルでやり取りされるファイルとは異なり個人のファイル保管場所として利用し、その対価としてBTTが支払われるもの。DropboxやGoogle Drive、iCloudなどと同様のものです。Siaが提供するサービスと似たようなものともいえると思います。
    これはBTFS(BitTorrent File System)として実現しそうです。
  • プロキシサービス。
    ユーザーとサーバーの仲立ちを行うサービスで、ユーザーはIP単位での制限回避したりする目的で利用します。

BTTが普及すればもっと別の可能性なども出てくるでしょう。

2019年のBitTorrent Token

2019年はTRONとの関連で、BitTorrentやBTT関連のサービスなどが色々出てきそうです。

BTTのBitTorrentへの導入

TRONのJustin Sun氏によると、BTTのBitTorrentへの導入は2019年のQ2(第2四半期)を目処に行われるとのことです。

BTFS(BitTorrent File System)

その名の通り、BTFS(BitTorrent File System)はBitTorrentを利用した日中央集権的なストレージサービスです。
2019年のQ2(第2四半期)にリリース予定であるこのサービスは、開発者向けの非中央集権的ストレージサービスとしてをトップを目指すようです。BTFSの利用料はBTTを利用して支払うことになりそう。

BT Live(BitTorrent Livestreaming)

BitTorrentクライアントを利用したBT Liveというライブストリーミング配信も開発されています。

配信やチャット、ギフトなどストリーミングアプリなどでトレンドの機能が用意されているようです。イベントなどでデモ版の画像も公開されており、限定的に初期バージョンを公開する予定もあるようです。

BT LiveはBitTorrentのTit for Tatの原理を利用し、閲覧者数が増加するとネットワークのスループットが強化されるため、従来型のストリーミングサービスの様に閲覧者の増加による負荷に耐性があるようです。

BitTorrent Tokenの評価

BitTorrent Speedというクライアントの拡張機能によるBTTの導入はいいと思います。最初にBTTの話を知った際、既存のエコシステムが乱されるのではないかと考えましたがそれはなさそうです。

そして可能性を持ったものだとも感じます。BitTorrentプロトコルを利用したファイルのダウンロードにはBitTorrentクライアント以外に必要なものがあります。Torrentファイルと呼ばれる情報を保持したファイルです。これをBitTorrentクライアントに取り込むことにより、ダウンロードしたいファイルのswarmに参加しダウンロードを開始することが出来ます。そしてこのTorrentファイルは殆どの場合ウェブサイトから取得します。そのためウェブサイトのサーバーが稼働していない状況に陥った場合には、このTorrentファイルを入手することができなくなり目的は達成できません。しかし、このTorrentファイル自体の提供もBitTorrentエコシステム内で行われるようになればファイル取得までのすべての単一障害点が排除され、本当の意味で検閲がないファイル共有ができるようになるでしょう。

しかし、BitTorrent TokenのWhitepaperなどでは触れられていない問題があります。それはBitTorrentプロトコルを利用しやり取りされるファイルの性質です。Linuxのディストリビューションなど権利者により配布されているファイルもありますが、権利者の断りなく違法にやり取りされるファイルも多いのです。ウェブサイトの中にはこういった違法なファイルのやり取りを幇助する目的でTorrentファイルを提供しているものもあり、規制当局などによる稼働の停止や訴追の対象になったりします。また、DDoS攻撃の対象になるなどし、稼働が不安定なものもあります。もし仮にこのTorrentファイルの提供自体をBitTorrentエコシステム内で行える様になった場合、規制を行うことが非常に困難になってしまいます。コンテンツ制作者の権利を害するようなやり取りが行われ続ける限り、より広い理解を求めるというのは難しいのではないかと思います。

そして上記のように現状行われている違法なファイルのやり取りによってBTTが得られる状況になってしまった場合は最悪だと思います。そういう場合にBTTが得られない様にするなどの対策がなくては、BTTの導入で犯罪行為が促進されることになってしまうのではないでしょうか。

当面は既存のユーザーがこのBTTに対してどういった反応をするのかを見守りたいと思います。

参考ページなど

公式サイト:https://www.bittorrent.com/btt/
公式Twitter:https://twitter.com/BitTorrent
Whitepaper:https://www.bittorrent.com/btt/btt-docs/BitTorrent_Token_Whitepaper.pdf

ZENISM
ZENISM
https://zenism.jp/news/bittorrent_token_btt/2019/01/05/
ZENISM
ZENISM
https://zenism.jp/news/binance_launchpad/2019/01/05/